トラックボールを選ぶとき、ほとんどの人がロジクールのMX ERGOシリーズとエレコムのISTシリーズで迷うはずです。私は両方を実際に買って使いました。結論から言うと:
- いま常用しているのはエレコム IST PROです。使い続けていて不満は特にありません
- ロジクール MX ERGO S も実際に購入して使いました。完成度の高い定番機ですが、ボタン割り当てが専用ソフト(Logi Options+)前提という仕様が私の使い方には合いませんでした
- 決め手は IST PROのオンボードメモリ。ボタン割り当てがマウス本体に保存されるので、ソフトの入っていないPCやiPadに繋いでも割り当てがそのまま効きます
順番に説明します。
エレコム IST PROとは
IST PROは、エレコムのベアリング支持トラックボール「IST」シリーズの上位モデルです(親指操作タイプ)。主なスペックは次の通りです。
- ボタン数: 10個(任意のキー入力を割り当て可能)+チルトホイール
- ボール: 36mm・ベアリング支持
- 接続: Bluetooth / 2.4GHz無線 / 有線USBの3way
- マルチペアリング: 最大6台切替
- センサー: 最大12,000DPI
- スイッチ: 静音タイプ
- オンボードメモリ搭載(割り当て設定を本体に保存)
- 価格: 定価24,980円・実売2万円前後(2026年6月時点)
ボールの操作感はベアリング支持らしく滑らかで、静音スイッチなのでクリック音もほぼ気になりません。ボタンが10個あるので、コピー・ペーストや音声入力の起動など、よく使う操作を一通り親指まわりに集約できます。
MX ERGO Sと両方買って使った
定番のロジクール MX ERGO S も実際に購入して使いました。2台を並べるとこんな感じです(左がMX ERGO S、右がIST PRO)。
MX ERGO Sそのものは良い製品です。質感は高く、クリックは静かで、トラックボール入門の定番とされるだけの完成度があります。ただ、使い込むうちに私の使い方では決定的な違いが見えてきました。
違い1: ボタン割り当てがソフト前提か、本体保存か
MX ERGO Sのボタンカスタマイズは、専用アプリ Logi Options+(Mac/Windows用)で行います。割り当てはこのアプリが動いていることが前提です。
ここで効いてくるのが、iPadなど「Logi Options+が存在しない環境」です。Logi Options+のモバイル版アプリはありますが、マウスのカスタマイズには対応していません。つまりMX ERGO SをiPadに繋ぐと、クリックやスクロールはできても、カスタムしたボタン割り当ては効きません。
IST PROはオンボードメモリに割り当てを保存します。設定アプリ(ELECOM Mouse Assistant)で一度設定すれば、その内容はマウス本体に書き込まれるので、ソフトの入っていないPCでもiPadでも、繋いだ先でそのままボタンが機能します。
違い2: 接続台数
マルチペアリングはMX ERGO Sが2台、IST PROが最大6台です。メインPC・サブPC・iPadのように複数デバイスを行き来する使い方なら、この差は大きいです。
違い3: 2台のPCを行き来する使い方で差が出た
私は仕事用とプライベート用で2台のMacを使っていて、マウスとキーボードはmacOSのユニバーサルコントロールで行き来させています。
ロジクールにも似た機能があります。Logi Options+の「Flow」で、マウスカーソルを画面端に持っていくと接続先のPCが切り替わる仕組みです。ただ実際に使ってみると、私には2つ引っかかる点がありました。
- キーボードを自由に選べなくなる。Flowでキーボードもマウスに追従させるには、キーボード側もFlow対応のロジクール製(MX Keysなど)で揃える必要があります。マウスを変えるだけのつもりが、キーボードまでロジクールに縛られる構図になります
- Mac同士ならユニバーサルコントロールのほうがスムーズだった。私の環境では、Flow経由の切り替えはOS標準のユニバーサルコントロールと比べて動きが微妙で、結局使わなくなりました
IST PROはこの点が素直です。独自の切り替え機能を持たない代わりに、ユニバーサルコントロールとの組み合わせで普通に動き、キーボードは好きなものを選べます。オンボードメモリのおかげで、どちらのMacから使ってもボタン割り当ては同じです。
活用例: ボタン1つで音声入力を起動する
私のIST PROの使い方で一番効いているのが、ボタンに音声入力(Aqua Voice)の起動を割り当てることです。ボタン5にF12を割り当てて、Aqua Voice側のハンズフリー起動をF12に設定。これで親指1つで「押す→話す→もう一度押す」の音声入力が完結します。
設定手順は別記事で詳しく書いています: Aqua Voiceで「しゃべって書く」環境を作る
このときもオンボードメモリが効きます。割り当てが本体保存なので、接続先を切り替えても「音声入力ボタン」がそのまま付いてくる感覚です。
惜しい点も正直に
不満は特にない、と書きましたが、強いて挙げるならジェスチャー機能です。割り当てたボタンを押しながらマウスを上下左右に動かすと方向ごとに機能を発動できる、という機能なのですが、これの設定と操作が直感的とは言えず、私は結局使っていません。
なので、ジェスチャーまで駆使してショートカットをフル割り当てしたい人には、正直トラックボールよりロジクールの MX Master 3S のような多機能マウスのほうが向くと思います。私は「たくさん割り当てても覚えられない」タイプなので、シンプルなキー割り当て(コピー、ペースト、音声入力など)だけで十分満足しています。
あとは価格です。実売2万円前後はトラックボールとしては高い部類です。ボタン割り当てを活用しないなら、無印のISTシリーズや1万円台のモデルで十分だと思います。
向いている人/向いていない人
向いている人:
- ボタンに音声入力やコピペなどのショートカットを割り当てて時短したい人
- iPadや複数PCを行き来して使う人(オンボードメモリ+6台切替が効く)
- 静音性を重視する人
向いていない人:
- ジェスチャー操作まで駆使してフル割り当てしたい人(MX Master 3S系の多機能マウスが向きます)
- とにかく安くトラックボールを試したい人(まず1万円以下のモデルで「トラックボールが合うか」を確かめるほうが安全です)
よくある質問
Q. iPadでも使えますか?
使えます。Bluetoothで接続でき、オンボードメモリのおかげでボタン割り当てもそのまま効きます。ここがLogi Options+前提のMX ERGO Sとの一番の違いです。
Q. MacとWindowsの両方で使えますか?
使えます。設定アプリのELECOM Mouse AssistantはMac/Windows両対応です。割り当ては本体保存なので、設定後は両方のPCで同じボタン配置になります。
Q. MX ERGO Sとどちらを買うべきですか?
ロジクールのエコシステム(Logi Options+での一括管理)で揃えたい人、接続が2台で足りる人はMX ERGO Sで満足できると思います。iPadでも割り当てを使いたい人、3台以上を切り替える人、ボタン数が欲しい人はIST PROです。
Q. メンテナンスは必要ですか?
トラックボール共通ですが、ボール周りにホコリが溜まるので定期的な掃除は必要です。IST PROはベアリング支持なので、滑りの劣化は感じにくい印象です。
まとめ
- MX ERGO SとIST PRO、両方買って使った結果、常用はIST PROになった
- 決め手はオンボードメモリ。ソフトのないPC・iPadでもボタン割り当てが効く
- 2台のMacを行き来するなら、ロジクールのFlow(キーボードもロジクールで揃える前提)より、ユニバーサルコントロール+IST PROの組み合わせが素直だった
- ジェスチャー機能は使いこなせていない。フル割り当て派はMX Master 3Sも検討を
トラックボール本体の使い心地はどちらも良いので、最後は「ボタン割り当てをどこまで・どの環境で使うか」で決まります。私のように音声入力ボタンを親指に置きたい人には、IST PROをおすすめします。